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涙の余部鉄橋最終日[2010年7月16日]

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Amarube-Tekkyo

いよいよ余部鉄橋・最後の日がやってきました。
晴天の鉄橋はもう見ることはできないと思っていました。この日の朝は澄み渡るような晴天。
すでに梅雨が明け、このまま気持ちの良い天気の中で見送ることができるだろう、と思いましたが…

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餘部集落は工事の準備で慌ただしく、「見送る」雰囲気ではありませんでしたので、俯瞰仲間と一緒に今西の尾根に登りました。
もう登るまいと思っていた余部の俯瞰です。
あまり人が入っていないのでしょう、笹や木々の成長も相まって道筋が分かりにくくなっていました。
特に帰りは、尾根筋が木々に隠れてあたかも谷を降りている錯覚にとらわれます。
すんなり回避できたはずの岩場もやや苦戦しました。
山の中はすべてが生き物。常に「変化」しています。地図とコンパスなしでは厳しいと思います。

汗水たらしながら登った俯瞰ですが、生憎<はまかぜ>通過時間帯は薄雲がかかってしまいました。
午前中にスタンバイされた撤去用のクレーン、足場が組まれた橋脚、<はまかぜ>を見送る人々が待つホーム…
観光客はそれなりにいるものの、既にその雰囲気は工事一色。緊迫した余部の風景が広がっていました。

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午後3時。青々とした田んぼ、入道雲、すっかり緑が濃くなった山々、ジリジリ照りつける太陽…
眩しいほどに鮮やかで生き生きとした景色を見て、誰しも夏の訪れを感じていたことでしょう。
しかし、このあと天気が急変。再び山に入るつもりでしたが、やむなく中止。
晴天の下を列車が走る余部鉄橋の姿は、これが最後でした。

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Amarube-Tekkyo

100年間近く風雪に耐えた鉄橋、全国の人々の想いがこもった鉄橋。
この突然の雨は、決してただの自然現象ではなく、そういった歴史や想いが一気に噴出したかのように思えました。

いつまでたっても豪雨・稲妻・雷鳴は収まらず、集落では「ウ〜ウ〜」という警報音が絶え間なく鳴り響いていました。
鉄橋が泣いているのか。それとも怒っているのか。
私もここで雨に打たれながら思わず泣きました。

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夕方5時前に降り始めた豪雨により列車が運休になってしまいました。
代行バスも走り始め、「もうこれで終わりなんだろうね…」と諦めかけた午後8時過ぎ、轟音とともに列車が天空を駆けていくのが見えました。
そのまま駅に上がって職員に確認すると、回送列車2本(内1本は後藤からのキハ181回送4連)、
最終の各駅列車2本、はまかぜ5号は間違いなく走りますとのこと。
鉄橋が再び息を吹き返したかのようでした。

乗り納めにと餘部〜鎧を往復乗車した後、西港でHAYASHI様、Mikeneko様と
旅客扱いとしての最終列車<はまかぜ5号>を見送りました。
トンネルから出た<はまかぜ5号>は汽笛を一声鳴らし、
6両編成の窓の明かり眩しく、ゆっくりとゆっくりと止まりそうな速度で暗闇を移動してゆきました。

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いま、ここに、確かに列車は鉄橋を渡っている。これまでと同じように。
渡り終えないでほしい、このまま時間が止まってくれないだろうか…
そう願いつつも列車はトンネルに吸い込まれていった。

列車が渡り終えるのを待っていたのだろう、トンネル近くの橋脚にオレンジ色の光が灯り始めました。
待機していた作業員が一斉に鉄橋の上に上がり、レールを撤去する作業がはじめられました。
夜中にあの高さに上がって作業するのは大変だろうなと思う反面、
さきほどの列車の振動がまだ伝わってきそうな鉄橋に手を入れるのは何とも忍びないように思えました。

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最後の回送列車通過直後に始まった切換え工事。
深夜にもかかわらず、多くのファンがその様子を眺めていました。中には涙する方も…
周辺には工事の作業音が響き渡り、やがてバーナーで何かを切断しているのか、煙が立ち込め始めました。
現実でありながら、現実でないような光景です。

形あるものはやがて崩れていくのは仕方がないことですが、不可逆の変化というのはやはり受け入れがたいものです。
鉄材が組み立てられることにより形を成し、やがて機能を果たすときに単なるモノを超えた関係性が生まれます。
その100年間という多くの人々との関わりがここで途絶え、消えゆくという寂しさなんでしょうね。

そのまま余部を去りました。
次に来る時はどうなっているのかな?新しい橋梁は、これまでより円滑に機能するのかな?
そして、この余部の風景になじむのかな?
ちょっと楽しみでもあります。

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