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モロッコの砂漠に行こう(5) |
翌朝7時、未だ夜が明けきらぬマラケシュ。 閑散としたロビーで一人待っていると、本当にこれから砂漠まで行けるのかと思ってしまいます。 周囲を見渡しても、人の気配が無いのです。 玄関の外に続く暗闇は、自分には今何もできないことを思い知らさせてくれます。 ここからの足と言えば車しかありません。 バスを使えば近くの町まで行けますが、そこから砂漠までは車をチャーターせざるを得ません。 そして、この時期は予約が一杯ですから、それも不可能。 いずれにしても今回申し込んでいる「格安ツアー」の車が全てなのです。 「何か聞き間違えてしまったのかな?」とソファーに座ろうとすると、一人の小柄な黒ぶち眼鏡の女性が玄関に立っているのが見えました。 もしかしたらツアーの参加者かもしれません。東洋人のようです。 きっと韓国人だと思い(一人旅の女性は韓国人が多いのです。)、英語で話しかけてみました。 すると、随分下手くそな英語が返ってきました。 「@%&$$"#"!」 「韓国人にしては拙い英語だな」と思いました。韓国人は皆英語が上手ですから・・・ それでもなんとか意思は通じで、同じツアーの参加者だと分かりました。 良かった、ツアーは現存していたのだ・・・安心しました。 それでも、ロビーに他の人は現れず。 もしかしたら、英語が拙い物同士、同じ聞き間違いをしていたのかな? そうして二人で待っていると、集合時間を過ぎてようやく白人旅行者が降りてきました。 これまでの静けさが嘘のように賑やかになってきました。 彼らはギリギリにやってくるのですね。 これまでも何度か白人たちと一緒に行動しましたが、決まって彼らはぴったりの時間か、やや遅れてやってきたものです。 予定の時刻より早めに来るのは日本人くらいのものでしょうか。 「・・・! もしかして、日本人?」と彼女が日本語で話しかけてきました。 「あなたも?」 「はい、そうです;」 |
参加人員は20人ほどでしたので、車は3台用意されていました。 我々が乗り込んだ車は日本製のミニバン。なぜか一部座席が後ろを向いているという不思議な車でした。 この席は嫌だな〜と思っていると、運悪くその後ろ向き座席になってしまいました。 我々を除いて全員カップルでしたので、二人づつ隣同士に座っていくと必然的に・・・ 上の写真は前に進んでいる訳ではなく、遠ざかっていく景色なのです。 これはちょっと気持ち悪いですね。 モロッコの赤い景色が突然現れては、あっという間に後ろに消えてゆきます。 |
我々が目指すサハラ砂漠の一端であるメルズーガまでは直線距離にして約400キロ。 蛇行する山道を行きますので実質はもっと長いでしょう。車で丸二日間かかります。 マラケシュを出た車は南東へと進み、やがて峠を登り始めました。 景色が徐々に高山の景色へと変わっていきます。 後ろ(前方)を見れば雪山がそびえ立っています。空気もどんどん肌寒くなっていきます。 道が蛇行するためか、アメリカ人カップルが酷く酔ってしまい、しばらく休息となりました。 |
マラケシュを出て5時間後、見通しの良い丘で降ろされました。 土づくりの建物が並ぶ街、このあたりではどこにでもありそうな光景でしたが、 ガイドが「アイト・ベン・ハッドゥ」と言うので、ようやくここが有名観光地であることが分かりました。 言われなければ気付かないまま通り過ぎていたことでしょう。 巨大要塞のイメージとはかけ離れています。 |
とりあえず、一番上まで登ってみることにしました。 白人観光客は遅いな〜と日本人二人であっという間に登頂。 アイト・ベン・ハッドゥからの俯瞰、とても良い景色です。 しかし、ここまでやってくる白人は少なく、下の方でウロウロしています。 なぜ登らないか?とあとで聞いてみたら「しんどい」のだとか。 とにかく上まで登らないと気が済まない日本人と比べると随分対照的ですね。 |
再び車に乗り込み、さらに3時間ほど走ると、ワルザザートという街に着きました。 日本時間ではもう午後3時ですが、ここで遅い昼食に。 メニューは「タジン」か「クスクス」しか選択の余地がありません。 これがモロッコのスタンダードです。 ここで初めての煮込み料理・タジンを頼みましたが、酸味と塩辛さが混じった微妙な味。 正直、あまり美味しくない・・・否、不味い。 これが普通の味付けであることを知った時、愕然としました。 嗚呼・・・好物の納豆が食べたい、漬物が食べたい・・・ |
ワルザザートを出発し、延々東へ向かって走ります。 風景は砂漠の様相を増してきました。 しかし、目的地メルズーガははるか彼方。まだ4分の1くらいでしょうか。 |
やがて大地に影が落ち、残照が町を照らし出すようになりました。 ただひたすら車は走るのみ。皆疲れたのか、車内は静まり返っています。 もうそこから宿までの記憶がありません。寝てしまったのか・・・ 周囲が暗闇に包まれたとき、宿に到着しました。 その宿は谷合に立地しているようで、川の流れる音がかすかに聞こえてきます。 宿ではまたまた「タジン」がふるまわれました。昼と同じ味です。 これしかないのか!というくらい、モロッコの食堂ではタジンしか出てきません。 ふと周りを見ると、東洋人がもうひと組おられました。年配の夫妻です。 真空パックのキムチを持参していたので、今度こそ韓国人のようです。 白人たちと楽しそうに英語で話しています。 しかし、我々日本人は英語があまり分かりません・・・ 「分かったら楽しいんだろうけどね〜」と話しながら、あまり美味しくないモロッコの食べ物をひたすらモソモソ食べていました。 そして、食べた後に戻った部屋の寒さよ・・・ シャワーを浴びるというレベルではありませんでした。 全ての衣服を着こんで布団にもぐりこんでも、なお寒いのです。 中国の雲南を思い出す寒さです。靴下も2枚着用しました。 ガタガタ震えながら、布団の中で夜明けを待ちました。 「早く太陽の光を拝みたい・・・」 マラケシュのセーターが早速役に立ちました。 |
翌日も延々と走り続けました。 後ろ向きの座席でしたので、体力の消耗も激しく、ただどこかで止まるのを待つだけ・・・ 凍えるような寒さが無いのだけが救いでした。 斜面に貼りつくように建つカスバ街道の村。 こんな光景が何度も現れます。 チベットやイエメンを思い出すような光景です。 どんな生活をしているのか気になるところです。 |
途中訪れたトドラ渓谷。 写真では迫力は伝わりませんが、両岸に絶壁がそびえ立っています。 岩でも落ちてこないか?と心配になりますね。 |
峡谷があるかと思いきや、田園風景も広がります。 しばらく田園のハイキング。 |
そして、町に入るとマラケシュを思い出すような「迷宮」がありました。 モロッコはどこもこんな感じなのでしょうね。 |
招待されたベルベル人の民家でお茶を振る舞われます。 土づくりの建物の中はそれなりに綺麗に整頓されていましたが、絨毯の存在が大きいですね。 殺風景な土の風景の中にあって、艶やかな絨毯は家の中を明るくさせます。 この地域で絨毯芸術が発展したのも色の乏しさからではないでしょうか。 |
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