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モロッコの砂漠に行こう(3) |
いつもは時間の許す限りギリギリまで寝ている私ですが、旅に出るとすぐに目が覚めてしまいます。 すこしでも意識が働きはじめると、頭の中は周りに広がる未知の世界への想像ばかり。明るくなるまでもう寝ていられなくなってしまいます。 この朝も例外なく目が醒めてしまいました。 時差ぼけもあるかもしれませんが、身体は自然に動いています。 まるで限られた時間を惜しむかのように・・・ そして、夜明けと同時にそのまま外に出ていました。 ひんやりとした冬の空気が身体を包みます。 でもその寒さは決して凍えるほどではなく、清々しく心地が良いものでした。 上を見上げると真っ青な澄んだ青空が広がっています。なんと濃い青なのでしょうか。 やがて朝日が町を照らしはじめました。 周囲に広がる土色の建物が真っ赤に染まります。 ここにはこの色しかないのかというくらい、赤、赤、赤でした。 建物の多くがレンガや土造りということもあるのでしょう。 まだ夢が続いているような異国を感じる風景です。 それにしても、昨晩の賑やかさはどこに行ってしまったのでしょう。 広場にあれだけ沢山あった露店は一つ残らず消えてしまっています。 地面に散らばるゴミやシミが、なんとか昨晩の出来事が嘘ではなかったことを証明する程度です。 |
その閑散さとは裏腹に、動物たちは元気でした。 鳩が天空を舞うかと思えば、所々に巣を作っているペリカンがカタカタと口ばしを鳴らしています。 そして、何よりも猫の多さが目につきました。 とにかくどこを見ても、猫だらけなのです。 毛並みの揃った猫もいれば、ボロボロの猫もいる。太ったもの、痩せたもの。 人懐っこそうな猫や、人に無関心な猫、目つきの悪い猫・・・ 様々な性格の猫を前にして、まさに猫社会が成立してることを思わせました。 人間が寝ている間は、まるで猫がここの主であるかのようです。 |
とある門の前に猫が立っていました。 私が近づいても微動だにせず、じっとこちらを見つめています。 いつまでも、いつまでも・・・ |
やはり動こうとしません。 とうせんぼしているのか、ただ眠いだけなのか。 それとも、「今は猫の時間なんだよ・・・何してるの?」とでも言っているでしょうか。 |
すぐにでも世界最大のスーク(市場)を歩きたいところでしたが、 それは朝食の後にすることにして、ちょっと門の外に出てマラケシュの日常風景を眺めてみることにしました。 マラケシュ旧市街は写真のような門と城壁に囲まれているのです。 かつての中国・北京や、西安のようなイメージですね。 まさに中世の建築物がそのまま残っているという感じですが、今は当然その機能は果たしておりません。 旧市街を抜けると、大通りに出ました。そこではすでに人々が動き始めていました。 その中でも目についたのは男性の衣服でした。 彼らはレインコートのような頭から足元まで一体となった服をあおっており、頭部が妙にとんがっています。 伝統的衣装なのか、その割には安っぽい。 砂漠の強い日差しを避けるものなのか、はたまた、兵隊の名残なのか・・・ 何を意味しているのか分からないちょっと不思議な服ですね。 なによりも、とんがり部分の調整が難しそうです。 |
赤壁にギラリと日が当たり始めました。 日陰では決してきれいに見えない壁なのですが、太陽の光を受けると鮮やかな色を放ちます。 明と暗のコントラストに、目の感覚がおかしくなります。 こうして朝のマラケシュの町を撮影していると、警官に注意を受けてしまいました。 カサブランカの駅につづいて、これで2回目です。 彼もやはり英語があまり話せない様子で、知っている限りの単語をつなげて何やら言っています。 ただの町の中、一体何が良くないのか・・・ 「ポリス!」「プリズナー!」「フォービドゥン!」 警察、監獄、禁止・・・ どうやら、カメラを向けた先が警察の施設だったようです。 ここは観光地のど真ん中、外見はどれも同じ「壁」にしか見えないのですが・・・ すでに多くの人がカメラを向けているのでは?と思いましたが、かなり怒っています。 謝ってもなかなか許してくれそうもありません。 モロッコは、ヨーロッパをすぐ目の前にしていると言えど、イスラムの国。 イランやサウジアラビアほどではありませんが、何かと戒律が厳しいので、このあたり怖いものがあります。 飲酒は鞭打ち、窃盗は手首切断という話はよく聞きますし、国によっては麻薬所持や婚外性交、同性愛なども容赦なく死刑になってしまいます。 出国前に見た「グッバイ・モロッコ」という映画でも、最後はこんな国にいられないと思うほど恐ろしかったですし、 イスラムの国々の神秘性の背面には何か狂った歪みのようなものが存在しているように思えます。 ひとたび歯車が狂うと、もう抜け出せない・・・ 気付けば命を失っている。そんな印象があります。 観光地でカメラを向けた方向が間違っていても、取り返しのつかない何かがあるのかも・・・ シャッターすら押していないのです。ファインダーを覗いただけ・・・ 幸いデジタルなのでデータを見てもらうか? しかし、「疑わしきは罰せよ」のイスラムでそんなことは通用するのか疑問です。 心臓が高鳴りました。 そうして、ひたすら申し訳なかったと謝り続けたら、警官の怒りの表情も消え、仕方がないなという顔になりました。 しばらく沈黙の後、「もう行っていいよ。気をつけなさい。」と解放してくれました。 ちょっとこれは怖いなと思いました。 その手の施設の識別がしづらいこの地での写真撮影は、とにかく気を付けた方が良さそうです。 前段の情報では、鉄道の撮影など全く問題が無いと聞いていました。 それでも厳しく注意されました。状況は流動的なのでしょうね。 旅人の情報など全くあてにならないことを実感しました。 その時たまたま大丈夫だっただけなのかもしれませんから・・・ 少しでも怪しいと思ったら、近くの人に確認してからカメラを向けるべきです。 |
朝食後、スークを歩いてみることにしました。 ここのスークは世界最大級だそうで、ガイドブックには安易にこの街に入ったら簡単に出られないようなことを書いています。 地図ももらったし、人間の住む町だから、まあ大丈夫だろうと街の中に入って行きましたが・・・ 様々な商店や工場がひしめくように並んでいる様を想像していましたが、意外と閑散としています。 まだ早いのかな?と歩いていてもどの店もシャッターを閉じたまま。 どうやら、今日は大晦日で、国全体一斉に休むということを知ったのはまもなくのことでした。 昔の日本もそうだったのですよね。 開いている店など一つもありません。 市場が見られなくて残念だった半面、やはり休むべき時は休むというその「イベント」を見てちょっと嬉しくなりました。 |
男たちが年始の準備に慌ただしく道を行き来しています。 どこかいつもと違う(であろう)、大晦日の朝です。 |
しばらく「飛び出し」を狙っていましたが、現れたのはデブのおばさんでした。 モロッコの女性は、一定年齢を超えると圧倒的にデブが多いですね。 あまり動かないからでしょうか? 男尊女卑と言われるイスラム社会ですが、労働から買い物まであらゆる外の仕事をしなくてはならない男性は、結構大変なような気がします。 「パパは外では偉そうだけど、家では尻に敷かれて情けない〜」という歌も聞きますね。 嗚呼、結局どこも同じか、悲哀・・・ |
「なんだよ〜」とにらみ返してくる猫。シャッターが開いていたら売店か何かなのでしょうね。 |
玄関からじっとこちらを見つめる女の子。おもちゃの眼鏡を嬉しそうに持っていました。 「買ってもらったの?」 「・・・・」 |
家の前でくつろぐお爺さん。 「特に何もすることもないんでな〜」 |
スークを歩いていると、道端に網を敷いて、肉を焼いている様子があちこちで見られます。 年末の行事のようですね。 生きた羊の首を切り落とし、そのまま焼いて食卓へ・・・ 首を切り落とすのは一家の主が行います。 アッラーの神に捧げる名誉な儀式だそうですが、動物とはいえ生きたままなんて恐ろしすぎます。 おっさん、怖いよ・・・ 「ところで私はどこにいるのでしょう?」 「地図なんか見ても分からないよ。適当に行ってみるしかないね・・・」 |
いよいよ本格的に迷ってしまいました。 まさかこんなに見事に迷ってしまうとは・・・ 地図とコンパスを見て目星をつけても何が何だか分かりません。 どこも同じ場所に見えてしまいます。 元の場所に戻ることはとても不可能なように思えました。 とにかくどこでもいいので城壁の外に出ることが先決だと歩いきましたが、道が蛇行するため方向感覚がすぐに失われます。 また同じ場所に戻ってきて、おっさんに笑われたり・・・ 山の中より難しいかも? |
スークの出口の門です。 4時間くらい彷徨ってようやく「脱出」することができました。 めどを付けていた門とは全く反対側でした。遠回りにはなりますが、城壁の外を宿へと帰ることにしました。 迷うと本格的に出られなくなるマラケシュのスーク。 地元の人は「感覚的に」目的地に到達できるようですが、観光客には分かりません。 この街を歩く人は、迷う時間を想定して、たっぷり余裕を持って挑んでくださいね。 |
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