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モロッコの砂漠に行こう(1)

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「本当の砂漠ってどんなものなんだろう?」ふと思いついた命題。

中国の砂漠には行ったことはありますが、運動場がどこまでも広がっているような感じで、どうもイメージとは違っていました。
やはり砂漠と言えば、ギラギラ照りつける太陽の下、うねるような砂丘を背景に、ターバンを巻いたアラビアの人々がラクダに乗って行進している・・・
ちょっとマンガチックではありますが、そんな情景が思い浮かびませんか?
そして、圧倒的な砂漠の風景の中に、身を置いてみたいと思うのまで、時間はかかりませんでした。

では、どこが良いのでしょうか?
調べると、ニジェールやモーリタニア、ナミビアなどが有名なようですが、これらサハラ砂漠以南の国々はサラリーマンには時間的に厳しい。
無論、無茶すれば行けないこともないのですが、短期間となるとどうしても旅行会社の手配が必要になります。
占めて50〜80万円コース・・・
個人でも比較的行きやすいところと言えば、交通の便の良いドバイ、リビア、モロッコあたりが思い浮かびましたが、
それらの国々で関心を引いたのはアフリカ北部のモロッコという国でした。
国土の南部にそびえるサハラ砂漠まで、都心からさほど遠くなさそうです。
観光地の匂いがプンプンしなくもないですが、それだけに単独行でも足の確保は容易なはず。なによりも文化的に面白そうなのが決め手になりました。
ということで、あまり深く考えずに、砂漠を目指してモロッコに旅立つことにしました。

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しかし、ここは年末年始、航空券の確保は困難でした。
モロッコまでの航空便は日本にも乗り入れをしているアラブ系が便利なのですが、とても取れる状況にはありません。
そこで、日本〜バンコクを日本で、バンコク〜ドバイ〜カサブランカ便をバンコクの旅行会社でキャンセル待ちをかけることにしました。
長期戦になってしまいましたが、なんとか座席を確保することができました。とにかく旅行社に対しては「主張」の一手ということを教えられました。「どうしても欲しい」と主張していたら、コロッとまわしてくれることがあります。

これでようやくモロッコまでの道筋が繋がったわけです。
バンコク、ドバイでそれぞれ一泊するという行程となってしまいましたが・・・

そして、第一の中継地・タイのバンコクは新空港・スワンナプーム国際空港に降り立ちました。
この新空港、建物は立派なのですが、あちこちコンクリートむき出し。味気なさが妙に目につきました。
かつてのドンムアン空港の方が温かみがあってよかったでしょうか。
また、国鉄の走っていたドンムアン空港とは異なり、市内までの交通手段はバスかタクシーに限られるうえに、距離も長くなっています。
渋滞が怖いなと思っていたら、案の定、帰宅ラッシュの時間帯で大渋滞に巻き込まれてしまいました。
結局、バスで市内までかかった時間は3時間・・・
クーラーをガンガン効かせた真冬のような寒さの車内で(運悪く防寒着は荷室の中)、アメリカ人の悪ガキ達がはしゃいでいる…
「空港で一夜を明かせば良かったかな」と後悔するほど、苦痛な移動となってしまいました。
「彼はきっと初めての海外旅行なんだよ、バカみたいだね。ほら、きょろきょろ街を見ているよ!日本人だからどうせ英語も分からないだろうしね。」
アメリカ人の悪ガキが後ろで言いました。
「私の事か・・・放っておいてほしいなあ。」
モロッコまで、遥か遠く。この後、さらなる「不幸」に遭遇することはこの時点では思いもよらず・・・


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バンコクを飛び立ち、翌朝ドバイに到着しました。
西に向かって飛んでいるので、とにかく一日が長い、長い。
ちょっと得した気分になります。
モロッコ・カサブランカ行きの乗り継ぎ便まで24時間ありますので、ちょっとドバイの砂漠も見に行こうか、と思ったのですが・・・

なんと、ドバイで受け取る予定になっていた荷物が出てこないのです。
クルクル回るターンテーブルを前にして、待てど暮らせど、出てこない。
やがて荷物は全て出切ってしまいました。

以前にもこのドバイで荷物が全く違ったところに紛れ込んでいたことがあったので、またかといった感じでしたが、
手当たりしだい空港職員に問い合わせてもどうにも出てこない。
裏の荷物室まで見に行きました。
「知らない。」「ないね。」「あっちで聞いてみたら?」という回答ばかり。
彼らは皆、自分の仕事をこなすだけで親身に対応してくれません。
これが外国というものですが、当事者の航空会社職員までこの調子ですから、いい加減ゲンナリしてきました。

仕方がないので空港内にある航空会社のオフィスに行きました。
番号札を取って待つシステムのようで、ソファーには大勢の人が腰をかけて待っています。
こんなところで大勢待っているなんて変だなと話の内容を聞いていると、彼らはどうも私と同じロストバゲージのようでした。
30分、1時間、2時間、刻々と時間は過ぎてゆきます。
それなのに、激怒している人は誰もおらず、「仕方がない」というあきらめの様子。
それだけ荷物の紛失が多いということなのでしょうか。

結局、コンピューターで調べてもらっても荷物の所在は分かりませんでした。
職員は状況をホテルまで連絡すると言ってきましたが、ホテルなど予約していませんでしたので、後ほど私から電話連絡するということでまとまりました。
「心ばかりのお詫び」として、入浴・歯磨きセットが手渡されました。

酷いことになってしまいました。旅の終わりならともかく、始まりに荷物を無くしてしまうなんて・・・
見るも無残にドバイの砂漠観光は消え去り、この日は荷物の手配で終わってしまいました。
ドバイといえども日本のように質の良い物が少ないものまた、惨めさを助長してくれました。
もちろん、寝袋や登山用の防寒着は手に入らず。ベースとしたのが旧市街の商店街だったのがまずかったのかもしれません。

それでも、カメラの充電機やガイドブックを機内持ち込みにしていたのは不幸中の幸いでした。
これだけは無かったら困る、というものは絶対に預けてはなりません。
コンセントの変換アダプターや電池類、メモリーカードを預けてしまって写真も撮れないなんて悲惨ですよね。
このような物はなかなか海外では入手できませんので、細心の注意を払わなければなりません。

それにしてもジャケットとセーターは重くてダサイですね。靴下も薄っぺら。
目覚ましもちゃんと動くのかな。バッグもなんだかやぶけそうで頼りない。
これでも占めて2万円くらいかかってしまいました。後で請求しないと・・・
果たしてこれで冬のサハラ砂漠まで行けるのか・・・


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必死になって衣服を調達していると、どんどん店が閉まっていくではないですか・・・
方々から店のシャッターが占められる音が聞こえてきます。
ガラガラガラ・・・
まだ真昼間です。
真夏の暑い時期なら「長い昼休み」なのですが、この涼しい時期にどういうことなのでしょう。

道に出ると、人々がおもむろにゴザを引き、ひざまづき始めました。
ファーストフード店の椅子やテーブルも片付けられています。
さっきまで車やバスがひっきりなしに走っていた道です。
どんどん、人が増えてきて、やがて車が通れなくなるほどになってしまいました。
しかも、男ばかり。

そして、「アッラー〜アクバル、アッラー〜アクバル・・・」という祈りの音声が、
町の至る所にあるスピーカーから大音量で響き始めました。
そういえば、今日は金曜日。礼拝の日だったのですね。
礼拝の時間に、商売なんてしていたら白い目で見られてしまいます。

このアザーンと言う祈りの音声が流れると、町の空気が一気に切り替わります。
腹の底から突き上げてくるような不思議な声が、身体の中を突き通るように響き渡り・・・
目が覚めるようです。
これは外国人にとっては神秘そのもので、イスラム文化圏に出向くときは、結構楽しみにしていたりします。
早朝に叩き起こされるのはちょっと困りものですが・・・

イスラム教徒に聞いてみると、こうしてお祈りを捧げるのは結構気持ちが良いことみたいです。
どんな宗教でもこのような祈りの時間はあるのですが、その中身云々は別にして、「気持ちの切り替え」ができるいいきっかけなのかもしれません。
逆にそれが目的なのかな?と思います。
うっかりしていると日々の生活は惰性で流れしまい、悪い気持ちを持ったら修正がきかずにどんどん悪い方向に・・・ということもありえますが、こうした「切り替えタイム」があれば、軌道修正できるような気がします。 まさに、リセットボタンを押すような感じでしょうか。

しかしそれでも、「酒を飲む方が気持ちが良いが、酒が手に入らない時は礼拝に行く」という不純なイスラム教徒も結構沢山おります。
その気持ちは分からないでもないですが。
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荷物がそろったのは時すでに日没間近の夕方。
まだまだ不十分といえば不十分だったのですが、買い物というのは結構骨が折れるものです。
新市街まで行くことも考えましたが、もう面倒になってしまいました。
「なんとかなるだろう、これでいっか。」

安宿に戻り、宿のマスターに空港から連絡は無いかと確認すると、まだ何の音沙汰も無いとのこと。
「エミレーツだから大丈夫、きっと真摯に対応してくれるさ・・・」
明日の朝までに見つかるかは絶望的な感じでしたが、明日は早めに空港に行ってもう一度荷物を探すことにしました。
(結局、荷物が見つかったのは帰国後。お詫びの電話と、お金の振り込みがありました。)

さて・・・やっぱり、このまま寝るのは惜しいですね。
せっかくドバイに来ているのに、当初の予定だった砂漠ぐらいは一目見てみたい。
「こんな時間でも行ける場所は無いかな?」と宿のマスターに聞いてみると、
「それでは、良い場所がある。行ってみたらいい」とマスター。
公園のようなところで、砂漠も見えるのだと言います。
満点の星空の下、ゆっくり夜の砂漠を眺められる静かな場所があるのだな、とちょっとワクワクしてきました。

教えられた通りにバスに乗り、たどり着いた場所は・・・
すっかり日も暮れ、うっすらと地平線に見える町明かり・・・街灯に照らし出された路肩のキメ細やかな砂。
まさにここは砂漠なのだ・・・良い感じだと思っていると、ふと随分明るい一角があるのが見えました。
バスを降りた人々は、吸い込まれるようにその方向に向かっています。
私も続いて歩いて行きました。
なんと、そこには遊園地のように賑やかな施設が広がっていました。

「ようこそ!万国博覧会へ!」


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どうやら期間限定の博覧会が開催されているようでした。郊外の砂漠のど真ん中に・・・
大変な人出で、博覧会内の大通りは全て人で埋まっているという感じでした。
様々な国が自国の名産物を販売しており、実に国際的な雰囲気。
中でも目を引いたのがこの建物でした。アジアエリアのど真ん中、中国の国旗がはためいております。
まさに、中国がドバイとの交易に力を入れていることを証明しているようです。
ちなみに日本はどこにも見当たりませんでした。

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こういう芸術作品を見るのは楽しいですね。でも、見るだけです。とんでもなく高価です。

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イエメン共和国のブースで売られていたジャンビーア(短刀)。
これは私も一本持っていますが、単なる装飾品で、何の使い物になりません。

こうしてドバイの観光は終わりました。
茫漠とした砂漠をゆっくり眺めるのはこの国ではあっけなく夢に終わりましたが、
この「華やかさ」がドバイそのものなのでしょう。
私の求めるものは、ここには無いようです。
そして、日本出発時よりもはるかに身軽な格好で、モロッコを目指すことになります。
こんなに軽くていいの?と言うくらい・・・

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随分遠いところまで飛んで来てしまいました。
窓から眺める眼下の景色は、いよいよ褐色の大地となりました。不毛のアフリカの大地がどこまでも続きます。
ちょっと想定外だったのは、アラビア半島のドバイからモロッコまで約7時間要することでした。
ドバイの時点でもう一息で目的地に到着すると思っていましたが、まだ2/3くらいだったのですね。
手元の地図で見てみると、なるほど東京〜カルカッタ位の距離があります。
そこはやはりアフリカの西部、飛行機とて嫌になるくらい遠い道のりなのでした。
もう日本から1万キロ以上飛んでいます。

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