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命がけの写真撮影

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2008/01/03 エチオピア Ethiopia [CanonEOS40D EF17-40F4.0L P RAW]

エチオピア南部では、写真撮影は非常に重要なビジネスです。自らを旅行者に撮影させ、金銭を得ることは、普通に働くよりもはるかに良い収入を得ることができます。 彼らは撮影の前には旅行者と「契約」を結びます。誰を撮影して、どれだけ払うか。旅行者がひとたび車を止めると彼らはズラ〜ッと車の前に並び、選ばれるのを待つのです。 そのまま彼らを撮影すると、もちろん全ての人々にお金を払わなければならなくなり、すぐに破産してしまいますから、撮影者は慎重に「好み」の人をピックアップするのです。

人を選ぶことに慣れていない私は、これには抵抗がありました。しかし、彼らはとにかく自分を選んでくれ!としか考えていないようで、選ばれなければさらに努力して良く見せようとするのです。 常に前向きなんですね。サバンナでは「落ち込む」=死を意味しますから、そんな人間はここには残っていないというわけなんです。 だから相手が傷つくとか気にしなくても良い。とにかく、撮影したい人を選ぶのです。

このように彼らは本当に必死ですから、何かとトラブルも生じます。 上の写真は実に「契約時」の写真なのですが、下手に選んで写真目線で撮影するよりも、このエチオピアの日常の映像を撮りたいという衝動に駆られました。 ライブビューでシャッター音を小さくして、こっそりシャッターを押しました。すると、シャッターボタンに指がかかった瞬間、子供が「こいつは写真を撮ったぞ!」と大声を張り上げ怒り始めました。 「いやいや撮ってない」「いや、撮った!」。実際にシャッターを切ってしまったわけですが、きっと視力の良い彼らは、レンズの小さな絞りの動作をキャッチしたのでしょう。 運転手が必死に説明して、彼らをなだめました。そうして何とか納まったのですが、これほど問題になるとは思いませんでした。

運転手曰く、「エチオピア南部では写真撮影のトラブルが絶えない。まだこの民族は温厚な方だからいいけれど、ムルシ族など気性の粗い民族となれば、その場で撮影者を殺害することもある。」とのことでした。 「だから、出発前に小銭を沢山用意しておけと言ったのだ。払えないと殺される場合がある。重々注意されたし。」

ここエチオピアでは、呑気なアジアや中近東とは様相はまるで異なっています。カメラを向けたら単なる好奇心だけで「わ〜」と子供たちが群がってくる (最近は旅行者が珍しくなくなり、冷めた目で見られることが多くなりましたが)、 あの情景がとても懐かしく思えました。 ここでの写真は生死をかけたビジネスなんですね。遥か少数民族を見物に来た旅行者と、生きる糧を得たい少数民族の切実なる契約は、今日も続いているのでしょうね。 (2012/02/02に記す)

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